フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜




 褒められて悪い気はしないが、どうして社長秘書の柳本という人物が穂乃香のことを知っているのだろうか? という疑問が浮かんできた。

 だが一緒に働くのだからリモートで行われた面接の画像を見ていてもおかしくはない。

 元職場でもそういうことはあった。

 なので穂乃香は早々にそうなのだろうと結論づけると、竹本に促されるままに秘書室のある最上階に向かうためエレベーターのゴンドラへと乗り込んだ。

 秘書室は十人前後で構成されており、五十代と思しき穏やかそうな男性・久我山《くがやま》室長が取り仕切っているようだ。

 久我山は、物腰が柔らかく気さくで、この人の下ならやっていけそうだな、と穂乃香はホッと胸を撫で下ろしつつ歓迎ムードの秘書室の面々にペコリと頭を下げた。

「葛城穂乃香と申します。不慣れなため色々と至らないこともあるかと思いますが、どうぞよろしくお願い致します」

 自己紹介も終え一通りの説明を受けた穂乃香が与えられたデスクに腰を落ち着けて程なく。何かを思い出したように手のひらを拳でポンと軽い調子で叩いた久我山が、取って付けたような台詞を口にする。

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