フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜


 昔から生真面目で面白みがないと揶揄されてきた穂乃香は、いわゆる優等生タイプだ。しかも一度こうと決めたら譲らない頑固なところがあった。

 大学を卒業し新卒で入社して以来、秘書課に勤務しているというのに、周囲の華やかな同僚とは違って、機能重視でチョイスした黒・紺・グレーのカチッとした地味なスーツをローテーションで着回している。

 メイクも薄化粧だし、一度も染めていない黒髪ロングストレートを団子にひっつめただけのシンプルなスタイルを貫いてきた。

 秘書は上司を陰でサポートするのが仕事であって、綺麗に着飾って上司に取り入る必要なんてない。

 そんな考えとある事情から、穂乃香は秘書にしてはいささか地味なスタイルを徹底してきた。

 今日は仕事上がりだったので、グレーのジャケットにタイトスカートというお決まりの地味な装いだ。

 優しい暖色系の灯りが仄かに灯るバーのカウンター席。そこに腰を落ち着けた穂乃香は、若いバーテンダーが作ってくれた色鮮やかなカクテルを静かに味わっていた。

 バーに一人で来たのは初めてだが、気後れしていたのも最初のうちだけ。

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