フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
カクテルに詳しくない穂乃香のためにお薦めのカクテルを作ってくれたが、どれもこれも甘くて美味しくて、何杯でもいけそうだ。
だからって調子に乗って飲みすぎるのは危険だという認識はあった。
けれど酔いたい気分だった穂乃香は、速いピッチでグラスを豪快にクイッと煽っては、お薦めのカクテルを作ってもらっていた。
五杯目を飲み干した頃には、もうすっかり酔いも回っていたように思う。
穂乃香はふわふわとした夢心地の中を漂いながらカウンターに寄りかかるように身を委ね、バーテンダーの見事なシェーカー捌きをとろんとした眼差しでぼんやりと眺めていた。
そんな穂乃香の隣に見知らぬ男性が腰を落ち着け、馴れ馴れしい口調で話しかけてくる。
「お姉さん、ひとり?」
「……ええ、ひとりで飲みたい気分なんです。そっとしておいてください」
冷たくあしらった穂乃香が近づくなオーラを醸し出しているというのに、空気の読めない男はしつこく絡んできた。
終いには、バーテンダーの目を盗んで「一緒に遊びに行こう」と強引に腰を抱いて穂乃香を店から連れ出そうとする。
元婚約者の身勝手な言動に腹を立てていたのもあり、その男と元婚約者の姿とが重なってしまう。カチンときてしまった穂乃香は、飲みかけだったグラスの中身をナンパ男めがけてぶちまけた。
そう、そのはずだったのだ。