フェチらぶ〜再会した紳士な俺様社長にビジ婚を強いられたはずが、世界一幸せな愛され妻になりました〜
ガバッと起き上がった穂乃香は、背筋を正し綺麗な正座の体勢に持ち込むと、神妙な面持ちで深々と頭を下げる。
「この度は多大なご迷惑をおかけした上に、醜態までさらしてしまい、申し訳ございませんでした。ここの宿泊代はもちろん、クリーニング代も支払わせて頂きますので」
謝罪の言葉をつらつらと並べ立てている途中、男性から制止の声が割り込んできた。
「いえいえ、その必要はありませんよ。バーでのことは私のお節介が招いたことですので、どうぞお気になさらないでください。あなたも色々とご入り用のようですし。実は私も嫌なことがあり、憂さを晴らすためにバーに立ち寄ったのですが、あなたのような綺麗な方と出会えて、愚痴を零し合うことができたのですから、それで充分ですよ」
ーーなんて優しい男性(ひと)なんだろう。
穂乃香は元婚約者としか交際経験がなく、こんなにも誠実な対応をされたことがなかった。ゆえに、感動さえ覚えつつあったのだが、いつもの頑固さがひょっこりと顔を出す。