おともだち
 それからしばらくして、会社の同期に飲みに誘われた。普段なら、あんまり仲良くない人と飲むくらいなら、一人か奈子とだなって思うんだけど、この日は違った。
「行く」と即答した。誘ってくれた人の方がびっくりしてて「何でよ」って笑った。

 セフレ、ではなく奈子の相手を見繕うつもりで参加を決めた。

 最初は同じ部署の女子数人とかたまって話してた。
「みんな、こうやってよく飲みに来るの? 」
 意外に参加人数が多くて、尋ねてみた。
「時々ね。けど、今日は他の部にも声かけたって聞いたから」
「そうそう、宮沢くん、来るって言ったのに来てないね」
「ねー、話してみたかったのに」
 
 どうやら、みんなその『宮沢くん』が目当てらしかった。
「私、ちょっと探ってみる。ねー、もうこれで全員揃ってる? オーダーとっていい? 」
「えーっと、あれ、宮沢まだ来てないじゃん」
「あー、マーケティング部まだ誰も帰ってなかったよー。行けないってメッセージは来てないし、先に始めよっか」

 なるほど。マーケティングの人か。どんな人だろう。

「ね、宮沢くんてどんな人なの? 」
「見たらわかるよ。背が高くって、かっこいいの。上層部の人にも男前だななんて言われてる。1回見たら忘れない華やかな人だよ」
「へえ。みんな宮沢くん狙いってこと? 」
「はは、やだぁ、仁科さん。そういうんじゃないよね、宮沢くんは。多分、彼女いるし」
「彼女っていうか、特定の彼女はいなさそう」
「あはは、わかる! でもさ、誰からも恨まれてはなさそうだよね」
「うん、人当たりいいもんね」
「遊んだとしても恨まれないのって、別れ方がうまいんだろうね」

 みんなまともに話したことのないイケメンに対してうわさ話を好き勝手言っているだけかもしれない。でも、私はぴくり肩を震わせた。

 火のない所に煙は立たぬ……って言うし?
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