おともだち
「酒は強い? 」
「うーん。それなりだと思う」
「そっか。じゃあ、完全に酔いが回らないうちに聞きたいこと聞いちゃお。あ、酔った方が話しやすいなら言って」
「……? うん」

 何の話だろうとは思うけど、この距離で目を見て話せるのってすごいなと、私は彼の目を1秒見たらすぐにお酒のグラスに逃げるのを繰り返した。……完全に挙動不審。

「俺たちは、セフレってことじゃん? 」
「そ、そうだね」

 急に関係を確認されて、口の中の物を飲み下すのに、ゴクンと大きな音がなってしまった。

「そうそう。同僚でも恋人でもない、気楽な関係だろ。けど、この関係でしか出来ない事もあると思うんだ」
 にこり、微笑む彼を私はぼうっと見つめた。

 この関係しか出来ない、こと……?
 一瞬セックス……かと思ったけど違うな。恋人をするものだ、本来。

「それって、何? 」
 目の焦点が合うと、端正な顔が微笑んでいて、私は改めて距離の近さを認識し、私たちの関係の浅さを知った。これから体を重ねようとしているのに、何も知らない。セフレだからそれでいいのかもしれない。だけど、急に怖くもなった。

 嘲笑を含んだ笑み、に見えなくもなく、何を考えているかわからない。少しばかり体を離すが宮沢くんはそれすらどうでも良さそうだった。

「ここで起こったこと、話したことは二人だけの秘密、だよね。相手の事は尊重はするけど……恋愛感情がない分、気楽。どう思われてもいいだろ? 」
「どう、までは……」
「はは。や、だから、この関係をやめたいって思うくらい相手をめちゃくちゃにしたいって話じゃなくて。本音の本音が話せるってこと」
「本音の、本音」
「そう。だって、何も知らないだろ、お互いの事」

 この一言で私は止めていた息を吐いた。吐けた。
 それに宮沢くんはまたおかしそうに肩を揺らした。

 どうして私の方がこうも緊張しなきゃならないんだろう。けど、家に入れてよかったのかという危機的状況ではないことは確かだ。私の気持ちを無視して組み敷いたりはしてこないのだから。
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