おともだち
「恋愛観――聞きたいなって思って」
「恋愛観」
「うん。恋人なら過去の話はタブーだろ? でもこの関係なら赤裸々に聞ける。トモダチ、だから」

 トモダチ。そう、前に何かがつくんだけど、そういうことだ。

「そうだね。宮沢くんの恋愛話って想像つかないもん。聞きたいな」
 宮沢くんはちょっと驚いた顔をしたあと、複雑そうに「だね」と笑った。

「恋愛観、それから、過去の……相手がどんな人だったか。どうして恋人をのぞまなくなったか。聞きたい」

 この質問には、自分さえ突き詰めることはなかった。ただ、普通の男女関係がしんどいと思ってしまったのだ。

「恋愛観。そっか、恋愛観」
 宮沢くんはもう一度苦笑いすると
「最初の恋愛は? どんな感じだった」
「初恋は、知らないうちに終わらせてる感じでね。うち、お兄ちゃんがいるんだけど、よく友達が家に来てて、“あの人かっこいい……”くらいのが思い返せば初恋だったかもしれない」
「あ、あるね。あるある。じゃあ、ちゃんと認識した恋は? 」
「うーん、中学の時に周りの冷やかしで両思いだってわかった恋があったなー。でも、お互い何も出来なかった」
「甘酸っぱいやつ! で、その後は? 」
「その後……は、高校の時ちょっといいなって思ってたコから告白されて、人生初めての彼氏が出来た。楽しかったなー。結局進学で離ればなれになって別れちゃったけど」
「あー、大学入ったら新しい出会いとか人間関係、生活も変わるし価値観変わっちゃうもんな」
「うん、そう。だから、ダメになるなってお互いわかった別れだった」
「うーん、なるほど。その頃は、彼氏と会うのは苦痛じゃなかったってこと? 」
「……そう、だね。ほんとだ! むしろ会いたかったし、会えるの楽しみにしてたよ。初めての彼氏で浮かれてたっていうのもあると思う」

 ふーんと相槌を打ちながら、宮沢くんは軽くテーブルを片づけ、少しのおつまみとお酒のおかわりを持ってきた。
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