おともだち
 私は()()()()()をすることになった。
 
 奈子と二人で住むという口実はかなりプライバシーば守られた。兄たちが介入しづらいのだ。住居を決める際も「奈子と行く」となるとついては来なかったし、引っ越しの際も、長く居座ることはなかった。

 住む町の治安なんかはきつく調査されたけど、それは私も不安だし逆にありがたかった。
 1SDKの部屋は、引っ越し前も、引っ越し当日も、“S”のドアは閉めといて、同席した奈子が「ここは私の部屋なので」と言えば兄たちが開けることは無かった。ドアの外からはわからない。そこが、2畳しかないウォークインクローゼットだなんて。

 奈子と同居だと家族からの突撃訪問も無けりゃ、急な呼び出しもない。後ろめたさはあるけど、実際奈子とは同じマンションにはしたんだから許して欲しい。私の心の平穏のために……。

 一人暮らしは実際大変だったけど、一人なら自分のペースでやればいいし、体調崩した時は奈子が駆けつけてくれたし、奈子が体調崩した時は私が駆けつけた。それなりにうまく行っていたし、家を出る時の条件、“実家にいる時と変わらない生活習慣と食事”はそこそこ守っていた。実家にも時々は顔を出したし、彼氏が出来ると帰りが遅くなることに罪悪感を感じずに済むことは本当に気楽だった。

 私はこの気楽さが心の底から求めていたものなのだと実感することになった。自分主体の自分の生活。

 ――社会人になって人生で三人目の彼氏と別れを告げた日

 寝転がって見上げた、装飾もない真っ白な天井に向かってはぁぁぁとため息を吐く。解放感に包まれる感覚は一人暮らしを始めた日のものととても似ていた。

 彼の事を嫌いだったわけじゃない。寂しい気持ちもある。
「向いてないんだな、結局」
 私はこの感情をそう結論付けた。
「器じゃない」

 私は誰かの彼女になる器じゃない。
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