おともだち
 仕事が生活のメインになりつつある、社会人4年目。26歳になる年の事だった。

 お風呂も終えてすっぴんに部屋着、泊まっても帰ってもいい状態でやってきた奈子と缶酎ハイを開けていた。
「多江、社会人になってから彼氏のスパン早かったよね。今回の、誰だっけ名前も覚えてないや。いい子そうに見えたけど」
「いいよ、覚えなくて。もう会うことも無いんだし。いい子だったよ。だから早めに別れたの」
「どゆこと? 好きになれなかったってこと? 」
「いや、好きだったけど、それ以上に彼氏がいる生活がしんどくて」

 奈子は二本目のチューハイ缶を手に取り、長い爪でプルトップと格闘している。プシュッといい音がして、ゴクゴク美味しそうに喉を上下させた。その様子を見て、私も二本目を手に取った。

「あー、まあね。就職して直ぐは余裕なかったもんね。仕事と両立っていうの? うまくやれなかったな、私も」
「うーん、そういうんじゃなくて。今は仕事もそれなりに慣れてさ、それでもしんどいって思っちゃって。私、人と付き合うの向いてないのかも」
「ようは、冷めたんじゃなくて? 結局好きなら忙しくても頑張るじゃん」
「人と長く長く一緒にいるのしんどくてさ。予定がなければ週末は必ず会うでしょ、付き合ってたら。その当たり前が辛くなってきたの。多分、相手が誰でもそうだよ、私。でも、寂しい時もあるしなぁ。私が会いたい時だけそばにいて欲しい、なんて勝手なことを考えちゃう。絶対に会わないといけないわけじゃない関係ってないのかな」
「あー、男がそれ言ったらサイテー! ってなるやつ」
「う、そうだけどさ」
「いいんじゃない? そういう関係も。双方が納得するなら。納得するってことは恋愛ほど気持ちが無いってことなんだろうけど」
「うんうん、かもね」
「プライベートでまでストレス溜めたくないもん。多江がいいなら私は否定はしないよ。そんな関係があったっていいじゃん。不特定多数とかじゃなけりゃね」
「不特定……多数? 私そんな社交的じゃないけど」
「社交的ってか、誰でもいい男はいるっしょ。それは病気貰いそうだからやめときな」
「……? どういうこと? 」
「え、多江が求めてんのって、セフレじゃないの? 」

 ぽろり、私の目からウロコが落ちた。
 
< 8 / 40 >

この作品をシェア

pagetop