初めての愛をやり直そう
「わかってる。賢い島津君には、愚かだって思ってることぐらい」
「そんなことないよ」
「…………」
「そんなこと、ぜんぜん思ってないよ」
拓斗は膝の上で拳を握った。
「俺、確かに最初は意外で、驚いて、興味本位もあって店に入ったんだけど、けど、榛原に笑いかけられて、ドキドキして……営業用だってわかってるのに、うれしくて。俺も同じだよ」
「……島津君」
「さっきの客、すごくムカついた。バイトは榛原の事情とかあるんだろうから辞めろなんて言えないけど、けど、できたらもう辞めたほうがいいと思う。うまく言えないけど、大勢の人にちやほやされるって、どうだろう? 誰か一人に大事にされるほうがいいんじゃないのかな?」
「島津君は女の子達にモテたいって思わないの?」
「……うぅん、思わなくはないよ。でも、今はあんまり思わない。俺、ここ数日ずっと考えて、一つだけど答えを見つけた」
「答え?」
「うん」
拓斗は茜に顔を向け、まっすぐ見た。
「確かにたくさんの女の子にモテるって気持ちいいかもしれない。きっと気持ちいいと思う。けど、たった一人にじっくり想ってもらえるってのと比べたら、ぜんぜん比じゃないって思ったんだ。俺、まだ榛原のことなにも知らないけどさ、笑顔、一人占めしたいって思ったんだ。他の男に笑いかけてるのを見たら、すごくムカつくから……それが正直なところ」
茜は驚いたように拓斗を見返し、やがて顔を真っ赤に染めた。
「でも」
「俺の気持ちを押しつける気はないよ。だって俺自身も、まだうまく言えないんだ。なんか、こう、アメーバみたいにぐにょぐにょしてて、形が定まらない感じ?」
茜がいきなりプッと笑った。
「変な表現!」
「そ、っかな」
「さすが秀才、発想が違う」
「…………」
「うれしい。そんなふうに言われたことないもん。初めてだよ」
「俺もこんなこと言ったの、初めてだよ。ずっと勉強ばっかりだったから」
「秀才だもんね」
「あ、いや、それは」
「ホントだもん。そっちのほうじゃ、私にとっては雲の上の人だもん」
「…………」
「勉強に恋は邪魔じゃないの?」
拓斗は思わず頭を掻いた。
「そりゃそうだし、これからも勉強第一だけど、でも気持ちとは別問題だと思う。想う気持ちは止められないし」
茜がそっと拓斗の手を握った。
「じゃ、とりあえず、勉強の邪魔にならないようにしながら、特別な友達から始めよっか?」
「特別な友達?」
「うん。例えば、私に勉強教えてくれるとか」
拓斗がその手を握り返した。
「いいよ」
真っ赤な顔をした二人。
恥ずかしそうに見つめ合い、やがてゆっくりと微笑みあう。
それは二人にとって、紛れもない初めての恋だった。
「そんなことないよ」
「…………」
「そんなこと、ぜんぜん思ってないよ」
拓斗は膝の上で拳を握った。
「俺、確かに最初は意外で、驚いて、興味本位もあって店に入ったんだけど、けど、榛原に笑いかけられて、ドキドキして……営業用だってわかってるのに、うれしくて。俺も同じだよ」
「……島津君」
「さっきの客、すごくムカついた。バイトは榛原の事情とかあるんだろうから辞めろなんて言えないけど、けど、できたらもう辞めたほうがいいと思う。うまく言えないけど、大勢の人にちやほやされるって、どうだろう? 誰か一人に大事にされるほうがいいんじゃないのかな?」
「島津君は女の子達にモテたいって思わないの?」
「……うぅん、思わなくはないよ。でも、今はあんまり思わない。俺、ここ数日ずっと考えて、一つだけど答えを見つけた」
「答え?」
「うん」
拓斗は茜に顔を向け、まっすぐ見た。
「確かにたくさんの女の子にモテるって気持ちいいかもしれない。きっと気持ちいいと思う。けど、たった一人にじっくり想ってもらえるってのと比べたら、ぜんぜん比じゃないって思ったんだ。俺、まだ榛原のことなにも知らないけどさ、笑顔、一人占めしたいって思ったんだ。他の男に笑いかけてるのを見たら、すごくムカつくから……それが正直なところ」
茜は驚いたように拓斗を見返し、やがて顔を真っ赤に染めた。
「でも」
「俺の気持ちを押しつける気はないよ。だって俺自身も、まだうまく言えないんだ。なんか、こう、アメーバみたいにぐにょぐにょしてて、形が定まらない感じ?」
茜がいきなりプッと笑った。
「変な表現!」
「そ、っかな」
「さすが秀才、発想が違う」
「…………」
「うれしい。そんなふうに言われたことないもん。初めてだよ」
「俺もこんなこと言ったの、初めてだよ。ずっと勉強ばっかりだったから」
「秀才だもんね」
「あ、いや、それは」
「ホントだもん。そっちのほうじゃ、私にとっては雲の上の人だもん」
「…………」
「勉強に恋は邪魔じゃないの?」
拓斗は思わず頭を掻いた。
「そりゃそうだし、これからも勉強第一だけど、でも気持ちとは別問題だと思う。想う気持ちは止められないし」
茜がそっと拓斗の手を握った。
「じゃ、とりあえず、勉強の邪魔にならないようにしながら、特別な友達から始めよっか?」
「特別な友達?」
「うん。例えば、私に勉強教えてくれるとか」
拓斗がその手を握り返した。
「いいよ」
真っ赤な顔をした二人。
恥ずかしそうに見つめ合い、やがてゆっくりと微笑みあう。
それは二人にとって、紛れもない初めての恋だった。