俺と幼馴染は終活中

厳しい現実

家についた俺は高校時代に使っていた物を整理し、集める。
高校時代に使っていた教科書や文房具などをフリマアプリに出品し、販売する。
制服や普段着などは布として使用し、小物を作る材料にした。
それを綺麗に写真で撮り、これもまたフリマアプリに出品する。

そんな感じで部屋を片付けていると、棚の奥に挟まっている一枚のカードを見つけた。
キラキラと光るそのカードは、昔母にねだって買ってもらったカードだった。
懐かしい想い出に浸っていたが、もしかしたら売れるかもと思い、検索すると意外に値打ちがついていることが判明。
光を当て、綺麗な写真をとると、売れている価格よりも安めでカードを販売する。
とにかく今はお金を手に入れなければ生活できない。だから節約術や高く売れるための術などを3年間で身につけたのだ。
お陰様で食費や光熱費などを合わせて、ぎりぎり父から送られてくるお金でやりくり出来ている。離婚前は、友達と一緒にカラオケに行ったり楽しい時間を過ごしていたが、高校生からはそんな訳にはいかず、お陰で友達は中学時代からの親友、琉唯だけになってしまった。
部活動もやりたかったけど、何かとお金がかかる。家の事情を知っている杏奈と琉唯はあまりお金関係の話をしないように心がけてくれてるから、そういう気遣いをしてくれる友達がいることが今は一番の幸せだ。

そんな事を考えていると、早速出品したカードが売れた。
右手で小さくガッツポーズを作ると、包装紙で包み、郵便局へ持っていく。
そして買ってくれた人に送り、数日するとお金が振り込まれるという仕組みだ。

「良かった。これで数日は過ごせるな」
職が見つかるまでの間、お金をどうにかして稼がないといけない。
父からの送られてきたお金は今月いっぱいで終わる。アルバイトをしようと考えたこともあったが、母が入退院を繰り返すので、中々自分にあうアルバイトが見つからなかったのだ。
あまりお腹が空いていなかったので、夕食は何も食べず、いつもより早めに布団に入る。
明日から頑張って、働かないといけないからと目を閉じると、疲れていたのか、すぐに眠りについた。


「おはよう、って誰もいないのか」
朝目覚めたものの、母は病院にいるし、今日から就活を行う。
高校の決まりで学校で授業を受けている期間は、就活をしてはいけないという決まりがある。
だからこの市の高卒採用を行う会社は3月末から面接などを行うのだ。

今日は県内の建設会社に面接に行く。
朝から着慣れないスーツを着て、面接で訊かれる内容を考え、事前に対策を打ったメモ帳をカバンに入れ、琉唯との待ち合わせ場所に向かう。

「司〜。おはよ!」
「おはよう」
琉唯と待ち合わせしていた公園に待ち合わせ時間よりも10分早く行くと、琉唯はもうベンチに腰をおろしていた。

「随分と早いな」
「そりゃそうだろ!今日から俺らは社会人だぜ!」
「まあそうか」
昨日まで一緒に高校に通っていた琉唯と俺が社会人になったなんてあんまり実感がないが、これから面接を重ねていく内に、慣れていくだろう。
まあ、一発で面接に合格するといいんだけどね。

「とりあえず行こうぜ!」
琉唯が随分とやる気なので、自然と俺のやる気も上がっていく。
そして、電車に乗り、市内の建設会社に面接に行った。

「琉唯、ちょっと早すぎねえか」
「ああ、そうだな」
面接が始まるのが10時なのにも関わらず、朝の8時30分に会社前に到着してしまったのだ。

「とりあえず、ファミレスで時間を潰すか」
俺らは近くにあったファミレスに入る。
すると、
「隣に座ってる人達、俺らの受ける建設会社の話してないか」
なんと隣に座っている人達が今日面接がある建築会社について話していたのだ。
その内容は企業のことについて。
企業がどのようなことをしているのか、会社のホームページを見て、確認しているのだ。

正直言って、自分達以外に会社の面接を受ける人がいるなんて、と驚いているが、それ以上に会社のことについて勉強なんて自分がしていなかったことに気がつく。
「なあ琉唯、会社のことについて調べてきたか?」
恐る恐る琉唯に訊いてみると、
「そんなの当たり前だろ。第一、会社のことについて訊かれるなんて面接の常識だろ」
「そ、そうだよね」
やばい。
俺が考えてきたのは、高校受験をした時に、あった受験対策用の面接だ。
てっきり、「将来の夢」だとかそんな話をするのかと思っていたのだ。

「まあ、何とかなるでしょ」
自分に暗示をかけ、心を落ち着かせる。
それでも、俺の心臓の鼓動は早くなるばかりだった。
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