チカ先輩のお気に入り。



急に横から伸びてきた手は、私の肩を抱き行き場を無くした。

うわ、なにこれ、これじゃあ動けないよ……!
男の人をチラッと見ると、ニコッと笑って私を見ていて。

それに、ドキッとしてしまう私がいる。
だ、だって……っこの人、顔がいいんだもん……っ!!


「あ、あの、離してください……っ!」

「やだね。盗み聞きした人が、逃げられるとでも思ってるの?」

「しょうがないじゃないですか……っ!聞きたくて聞いたわけじゃ……っ!」

「そっかそっか。君の理由なんてどうでもいいけど」

「な……っ」


こ、こいつ〜〜っ!!なんなの……!!
慌てる私に、余裕そうなこの男。
な、なんかすごく……ムカつく!!


「はい、君名前は?」

「え、急になに……」

「名前聞いてるんだけど」

「…三倉、雪桜です……」

「雪桜ちゃんね。覚えた」


いや。いやいやいや。覚えてもらわなくて結構です。


< 10 / 303 >

この作品をシェア

pagetop