チカ先輩のお気に入り。




女の人は言いたいことを言えてスッキリしたのか、じゃあと言ってUターンして帰っていく。
その後ろ姿を呆然と見つめることしかできず、しばらく放心状態だった。



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……あの人に何も言えなかった。
ボーッとしながら家に着いて中に入る。

靴を脱いでそのまま歩くと、リビングのドアが開いていて。


「…あ、雪桜おかえり」


そこから見えたお父さんの姿。
……そうだ今日休みって朝言ってた。

なんだか、一気に力が抜けて緊張感がプツッと切れる。
すると、ツーンとして自然と目に涙が溜まり始めて。

……っ、やばい。


「……っ」

「え、雪桜……?どうかし……」


泣き顔なんて見せたくなかった。
なんで泣いてるのか、なんて聞かれても答えられないから。

身体が勝手に動いて、走って階段をのぼり自分の部屋に駆け込む。



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