チカ先輩のお気に入り。
涙も収まり、目の腫れも引いてきて。
……お父さん、心配するよね。下降りよう。
疲れて重い身体をゆっくりと動かして部屋を出る。
階段を降りてリビングに入ると、どこかソワソワしたような様子をしたお父さんが椅子に座っていて。
「…あ、雪桜」
「……ただいま、お父さん」
「……おかえり」
私を見るなり、ハッとした様な顔をして。
いつも通り笑って声をかけると、お父さんも笑って返してくれて。
「アイス買ってきてあるぞ」
「えっ、やった!」
……なにも聞かないでくれてる。
それが今はありがたくて、自然と笑みがこぼれる。
アイスを片手に持ちながらソファに座ってボーッとする。
……私、少しの間だけチカ先輩から離れよう。
私の気持ちの整理がつくまで……ある程度傷つく準備ができるまで。
今は、もう限界だ。何も聞きたくないし知りたくない。
……私、こんなにもチカ先輩が好きなんだなあ。ほんと、呆れちゃう。
またギュッと胸が痛くなってアイスを口に運んだけど、味はよく分からなかった。