チカ先輩のお気に入り。



ギュッと抱き締められたまま、逃げることも出来ずに焦っていると。


────ポツッ……ザァァァ


「……っわ!」


急に、雨がポツポツと降り出してすぐに強くなった。
それに私達も話どころではなくなって。


ここから駅がすぐ近くなのが幸いだった。
急いで駅に行こうとすると、チカ先輩は私の腕をグイッと引っ張って。


「あの……風邪引きますよ……っ?」


もう既にずぶ濡れだというのに、何してるんですか……っ!!


「雪桜ちゃん、家まで歩くんだよね?」

「え?はい」

「俺ん家駅近だから、俺ん家まで来よ」

「へ……っ?ちょ……!」


チカ先輩の言葉に、理解出来ず放心状態になっていると、グイッと腕を引っ張られて走り出すチカ先輩。
それに私も走ってついていく。

え、え、え……?
なにも言わずに雨の中走るチカ先輩に、鼓動が速くなってどうすればいいのかわからない。

それってつまり、チカ先輩の家に行くってこと……ですよね!?



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