チカ先輩のお気に入り。



目の前の男の人が、そう言いかけた時。
後ろから私の名前を呼ぶ声がしたかと思うと、後ろから手が伸びてお腹に回り引き寄せられた。


「……逃げちゃ、ダメでしょ?」


後ろから私を抱きしめているチカ先輩は、私の耳元で少し低めの声で囁いてきて。
それに、かああっと身体の体温が上がる。
声だけでわかる色気に、心臓が騒いでいる。


「ちょ……っチカ先輩……っ!」

「あれ、知佳じゃん」


さすがに抵抗しようとチカ先輩の名前を呼んだ時。
目の前にいた男の人が驚いたような顔をしてチカ先輩の名前を呼んだ。それも親しそうに。


「…あ!もしかして、知佳が言ってた子ってこの子?」

「ああ、そうだよ」


え、どういうこと……?私がさっきぶつかった人はチカ先輩の知り合いなの?
そうなんだー!って笑ってる男の人に、困惑する。



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