チカ先輩のお気に入り。
恥ずかしさからか手が震え始めて。
私はコクコクと頷くことしかできない。
そんな私を見て満足したのか、笑ったチカ先輩は私から手を離した。
「じゃあ、大人しく帰ろうね」
「は、い……」
「あれ、力なくなっちゃったね」
「誰のせいだと……」
またいつもの調子の先輩に戻り、力が抜ける。
……っ、こんなのドキドキしないわけないよ。だからこれは私がおかしいわけじゃない。
チカ先輩を意識してしまったという事実と向き合いたくなくて深呼吸をする。
「行くよ雪桜ちゃん」
「……はい」
「電車?」
「そうです」
「じゃあ俺と同じだね。途中まで送ってあげる」
強制的にチカ先輩と帰ることになって。
チカ先輩といると気をつかわなくてもいいけど、心臓に悪いんだ。たまにムカつくけど顔はいいもん。
玄関の方に歩き出したチカ先輩の二歩後ろぐらいをついていく。