チカ先輩のお気に入り。



そう思ってしゃがみこむと、目の前に泣きながら走っていく女の人が通った。

幸い、気付かれずに済んだけど。
……すっごい綺麗な人だった。
多分見たところ先輩だと思う。
あんなにも綺麗な人を振るなんて、どんな先輩なんだ。

それに、あんな冷たく振る?自分に好意を寄せてくれた人にあんな言い方したら、傷つくに決まってるじゃん。

ひどいな。なんかテンション下がっちゃった。


スっと立ち上がり、ふう、と息を吐く。


「よかった……バレなくて」


そう小さい声で呟いて、角を曲がろうとした時、フッと目の前に影ができる。

え……っ?


「残念だね、バレてるよ」


さっきの声。低いけど、聞き取りやすくてどこか心地のいい声が今、私に話しかけている。

そうだ。さっき女の人は去っていったけど、まだ男の人が残ってたんだった……っ!!
サァァ、と血の気が引き、そおーっと顔を上げるとそこには、


「……盗み聞きなんて、悪い子だね?」


とんでもない、美少年が立っていた。


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