ロックオンされました。


 互いに「やめろ!」と言い合いながら掴み合って、一時休戦する。
 
「食べ物は残さず食べなきゃな」

「そうよね。残さず食べなきゃね」


 私たちは若者がするみたいな悪ノリをやめた。
 いいオトナが他の客人の迷惑も考えずに騒ぎすぎてしまった事に、少し反省する。
 それから、お互いにビクビクとしながら激辛になったラーメンを食べてみた。

「辛っ!! こりゃあバナナで口直ししないと舌がやられるぞ!」

「なんでバナナなのよ。それを言うなら牛乳でしょ?」

 そんなことを言いながら騒いでいるうち、また彼のLINEが音を立てた。

 悠人はスマホ画面を見るなり、嘘のように真顔になった。慌てて激辛のラーメンを完食させる。

「かっら…!! バナナ買わなきゃな?」

 そう呟いて、グラスの水を勢い良く飲み干した。

「なんでそんな急ぐのよ? 唇真っ赤よ?」
 
「…ごめん。ちょっと用ができたから先行くな?」
 
 またな。と言って、悠人は私を一人残し、ラーメン屋を出ていってしまった。
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