ロックオンされました。

 若くて可愛い女子社員にロックオンされた悠人は、とても優しかった。

 小娘からの食事の誘い、飲みの誘い、そこからのわざとらしい相談事。アホかと思うほどに真剣に乗ってあげているのを知っている。

 バカがつくほどのお人好しなのだ。

 悠人は誰にでも優しい。
 だから私にも、同じようにそうなんだ。

 もしかすると、彼女に対しては特別なのかもしれない。特別だから、今のLINEでそそくさと私を残して去っていったんだ。

 これから愛の告白に対してサシで会ってOKして、今夜から交際スタートと言った流れになるんだろう。

 という事は、私が日々無くしたくないと大切にしてきた、この曖昧な関係も終わりを迎える事になる。
 
 イライラした。

 このドロドロとした黒くて重い闇にのまれてしまいそう。

 こんな負の感情には、もっと強烈な刺激を与えて薄れさせればいい。
 だから私は、激辛になったラーメンをダイソンの掃除機のように激しくすすった。

 辛すぎて、派手にムセて泣けてきた。
 汚らしく鼻水までが出てくる始末。
 他のお客の視線なんてどうでもいいし、見たけりゃ勝手に見て笑えばいい。

 私は、バナナになりたいと思った。
 なんの感情も持たない、彼の大好物のバナナに。
 
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