地味婚
結局、「県外を出る!」と言って意気込んだものの、家に帰るわけにもいかず(こっちでビジネスホテルを予約しているので)、電車料金があまりかからず、駆け落ちっぽい場所。
虎太郎と話し合って、静岡県の御前崎の海岸へ行くことにした。
県外って言ってもお隣さんだ。
だけど、私は無性に海が見たかったし、虎太郎も『御前崎、行ったことない』と言うので、ちょうど良い。
バスに乗り、バス停から徒歩二十分。
眼前に広がるのは、砂漠……ではなく、砂丘。
「へー。静岡にも砂丘ってあるんだね。俺、鳥取の砂丘しか知らないや」
砂の上を歩きながら虎太郎が、物珍しそうに辺りを見回す。
十二月ということもあって、観光客の姿はない。
ふと振り返ると、離れたところに男性が一人で歩いている。
「愛知の人は、県外の人が嫌いなの?」
虎太郎が、唐突に聞いてくる。
「そんなことないよ。お父さんがおかしい」
「そっか。じゃあ、結婚を反対されてるのは、俺らだけかあ」
「なんで私だけなのよ。世の中、結婚を反対、」
そこで私は、以前聞いた親戚の話を思い出す。
「そういえば……。はとこも結婚を反対されたって、伯母さんたちから聞いたなあ」
「え、それって県外の人と結婚したから?」
「はとこの結婚相手は、確か愛知県の人だって伯母さん言ってたよ」
「それじゃあ、なんで反対されたんだろう。それからどうなったの?」
「さあ? 私、そのはとこと仲良くないから結婚式にも呼ばれてないし」
「結婚できたかどうかも不明ってことか」
「うーん。結婚式をしたとかって伯母さんたちが言ってた気もする……」
私は必死で記憶を手繰り寄せようとするが、なんせ数年前の伯母の話をちょこっと聞いただけなので、はっきりと詳細は思い出せない。
そんな話をしているうちに、目の前に青い海が広がっていた。
虎太郎と話し合って、静岡県の御前崎の海岸へ行くことにした。
県外って言ってもお隣さんだ。
だけど、私は無性に海が見たかったし、虎太郎も『御前崎、行ったことない』と言うので、ちょうど良い。
バスに乗り、バス停から徒歩二十分。
眼前に広がるのは、砂漠……ではなく、砂丘。
「へー。静岡にも砂丘ってあるんだね。俺、鳥取の砂丘しか知らないや」
砂の上を歩きながら虎太郎が、物珍しそうに辺りを見回す。
十二月ということもあって、観光客の姿はない。
ふと振り返ると、離れたところに男性が一人で歩いている。
「愛知の人は、県外の人が嫌いなの?」
虎太郎が、唐突に聞いてくる。
「そんなことないよ。お父さんがおかしい」
「そっか。じゃあ、結婚を反対されてるのは、俺らだけかあ」
「なんで私だけなのよ。世の中、結婚を反対、」
そこで私は、以前聞いた親戚の話を思い出す。
「そういえば……。はとこも結婚を反対されたって、伯母さんたちから聞いたなあ」
「え、それって県外の人と結婚したから?」
「はとこの結婚相手は、確か愛知県の人だって伯母さん言ってたよ」
「それじゃあ、なんで反対されたんだろう。それからどうなったの?」
「さあ? 私、そのはとこと仲良くないから結婚式にも呼ばれてないし」
「結婚できたかどうかも不明ってことか」
「うーん。結婚式をしたとかって伯母さんたちが言ってた気もする……」
私は必死で記憶を手繰り寄せようとするが、なんせ数年前の伯母の話をちょこっと聞いただけなので、はっきりと詳細は思い出せない。
そんな話をしているうちに、目の前に青い海が広がっていた。