偶然?必然?運命です!

「行くか。家は何処だ?」




「あの」


「うん?」



助けてくれたのは本当にありがたい。


けれど……



「どうして助けてくれたんですか?それに今も……」



こうして送ってくれるのは。



男の人は私の質問に



「あんなに必死の形相で」



えっ!?


必死の形相って、どんな!?


それってもの凄いブスだったのでは!?



「逃げ回ってる奴を助けないなんて、人としてどうよ?それに」


「それに?」


「この後アンタと別れて、アンタがまたあの野犬に、変な男にでも絡まれたりしたら寝覚めが悪いからな」



そう言ってスタスタと歩き出す、男の人。


なるほど。



それでも、あんな野犬に狙われてる人を助けようなんて思う人はなかなか居ない。



現に助けてくれたのはこの人だけ。



良い人だなぁーー。



「あのっ」


「うん?」


「家、こっちです」


「「……」」



私は男の人が歩いているのとは逆の方を指差した。



「早く言えよ……」


「ごめんなさい」



バツが悪そうに頭を掻いた男の人は、私が指差す方へ歩き出す。


耳が赤い。


どうやらこの人は照れ屋っぽい。



「フフ」



笑った私は……


スタスタと歩く男の人を後を追う。



もう野犬に襲われることはなかったけれど……



何処かから、野犬の遠吠えが聞こえたーー。



雑談しながら並んで歩いていると、アッという間に家に着いたのだった。


おおおおおおお……。


本当にアッという間……。


クッ……。
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