叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

 そんなことを言わせるつもりはなかった。

 「嫌いなわけがないでしょ。どうしてそう思うの?あなたはとても素敵な人よ。こんな大切な話をしてくれた。私は……」

 私は、彼が嫌いなどころか惹かれている。でも。どうしても踏み出せない理由がある。それは……。
 私が下を向いて黙ってしまったのを見て、彼はため息をついた。

 「……すまない。俺の気持ちを押しつけるようなまねをして。わかっているんだ。君の気持ちが向くのを待つべきだと」

 ふたりで沈黙が続き、私は口を開いた。

 「そんな風に言わないで……嬉しかったの。あなたが自分の心にある誰にも見せなかった思い出を私に見せてくれた。でも私はそんなあなたにすぐ返せるものがない」

 「由花。君が俺を遠ざけたいと思わないうちは側にいさせて欲しい。まだ友達でもいいが、アプローチはさせてくれ」

 私は彼の真剣な顔を見た。湖に夕日が落ちてきている。これこそ最初に言っていた素晴らしい告白にピッタリの場面だったのに……私は最低かもしれない。
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