叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

 うしろから、強い女性物の香水の香りがした。

 「お待たせ。どうしたの、藤吾さん」

 振り向くと、レースの黒いドレスを着こなした忘れられない女性がこちらを睨むように見ている。

 「……いや」

 彼が私から手を離した。私が会釈をして下がろうとしたその時、彼女が言った。

 「あら、あなた。以前、彼のホテルにいた子よね。今度はツインスターで花を活けてるの?良かったわね」

 彼女はせせら笑うように私を見て言う。わざとらしい。私と彼のことを知らないはずはない。あのとき私を辞めさせるため啖呵を切ったのは彼女だ。ただ私を貶めたいだけ。

 「やめろ、加奈子!由花をこれ以上傷つけたらお前でも許さないぞ」

 彼女は顔色を変えた。そして、私を指さすと言い放った。
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