叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する
「そういえば、そうだった。おばあちゃんのこともあって忘れてた」
「由花。家元のことだが、できるならこのタイミングで継承したほうがいいんじゃないか。医師がおばあさんに療養を勧めてたからね。君が継いでいく気持ちに変わりはないんだろ?」
「もちろんよ。ただ、気持ちはあってもやっていけるかわからない。年配のお弟子さんが多いの。私が家元で納得してついていてきてくれるかどうか不安なの……」
本来なら父が継承していたはず。もちろん母はお弟子さんだった縁で父と結婚したから母でも良かった。本来の次期家元より年齢的に少なくとも三十歳以上開きがある。若輩者の私に皆がついてきてくれるかが一番心配だった。
「大丈夫だ。君の実力はエントランスの花や今日のレセプションの花を見てもわかる。それに、年配のお弟子さんの対応はうちの祖母に頼ってもいいだろう。社交界の大勢の身分ある女性達のことは祖母が操縦してくれるよ」
確かにそうかも知れない。大奥様がひと言言って下さったら、どんな人達も静かになりそう。でも、それでいいのかな……。
「由花。今はそれでいいんだ。大体、君の境遇を知っていても一門に名を連ねている人達が後ろ指を指すようなことはしないと思うよ。何かあれば俺がお仕置きしてやる」