叱られた冷淡御曹司は甘々御曹司へと成長する

 お父様はご存じだったのね、玖生さんのこと。

 「あの……玖生さんが私と付き合おうと思った理由は、私がずうずうしく何でも考えていることをはっきりと玖生さんに言うからだったそうです。自分の結婚相手は言いたいことを言い合える関係の人でないとする気はないとおっしゃってました」

 お父様はうなずいた。おじいさまは驚いている。

 「やはりそうか。あの子はわかっていたんだね。周りにいる女性や見合いで連れてこられた女性はまずあの子の身分を見て、気に入られようといいことしか言わない。そんな関係だと長続きしないと思っていたんだろう。父さん、答えは出ましたね」

 「いや、清家財閥の嫁としてはやってもらわねばならぬことがある。家元より優先すると約束できるかね?」

 「……お約束はできません」

 「さすが由花さん。それでなくては家元は務まりませんよ。あなた、勘違いも甚だしい。清家の仕事のほうが彼女の織原流家元としての仕事より上だとどうして思うの?家元とて大事な仕事ですよ。全国に支部がありお弟子さんも大勢いる。その頂点にいるの。そんなすごい人が清家の嫁になってくれるなら社会的に十分な価値がある。海外へ彼女を連れて行き、花を活けてもらうだけでかなりの利益になります」
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