冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

確かにネットに書いてあった。
さりげなく『ほっぺにチュッ』もアリだと。
けれど、そんな恋愛上級者がするようなこと、無理に決まってる。

そもそも、どうやって上條君と2人きりになるのかという問題ですら、解決出来そうにないのに。
手渡しだって、かなりハードルがある。
面と向かって手渡し……無理だぁ~。

下駄箱か机の中にそっと入れとく?
なんか他の子にバレそうで怖い。

和香に手伝って貰って、藤宮君もいる時にさっと渡す?
それはそれで恥ずかしい。

作るのは簡単だけれど、それ以外が途方もなくハードルが高いんですけど。



19時過ぎに和香が帰って、20時過ぎに母親が帰宅した。

「わぁ、甘い匂いがする~♪」
「明日バレンタインだから、和香とさっきまでお菓子作りしてたの」
「今年は何作ったの?」

去年はマドレーヌを作って、仲のいい子同士で交換し合った。

「今年はこんな感じになった」
「わぁっ、可愛いっ!」

チョコ味の生地にクマ型で型抜きし、可愛らしいクマさんの顔にデコって。

「パパとママの分もあるからね」
「やったぁ♪」

ダイニングテーブルに夕食用のお皿を並べてていると。

「上條君には何つくったの?」
「っ……」

バレてる。
手元のお皿からゆっくり視線を持ち上げると、ウフフッと含み笑いをした母親が顔を覗き込んで来た。

「………ホワイトチョコのチーズケーキ」
「いんじゃない♪ガトーショコラとか生チョコとかクッキーとか、オーソドックスなものより記憶に残りそうで」
「っ……」

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