冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心


「予想はしてたけど、凄いね」
「うん。……行列が出来てる」

教室の入口に立つ藤宮君あてに、廊下から階段の辺りまで女子の列が出来てる。
それも、朝から休み時間の度に。

「あれ、お返しするのも大変そうじゃない?」
「お返し無しならってことみたいだよ?」
「へぇ~、腹黒なんだ」

何日か前に本人が言ってた。
お返し無しでよければ受け取るって。

それで、あの数って。
モテる男は大変だね。

上條君、見当たらないけど、どこ行ったんだろう?
教室内を見回しても姿が無くて、ほんの少しそわそわしてしまう。
すると。

「すげぇよな、上條も。男子トイレにまで追っかけて来てたよ、あの1年の子」
「あそこまでされたら、さすがに受け取るんじゃねぇの?」

え、何そのやり取り。
2年の教室がある階の男子トイレにまで来て渡す強者がいるの?

「まどか、今朝渡したの?上條に」
「……ううん、まだ渡してない」
「早く渡さないと、渡しそびれるよ?」
「……ん」

何となく予想はしてた。

彼が受け取るような素振りを見せなくても、しつこく渡そうとする子がいることくらい。
それでも、何となくだけど。
彼なら全拒否してくれるんじゃないかな?だなんて、淡い期待しちゃってたんだもん。

私の頭の中、相当お花畑になってるっぽい。
『絶対』だなんて、ありえないのに。
『それでも』だなんて、勝手に思い込んで。

どんだけ自分に自信があるのよ。
ただ単に、何度か『小森が好きだよ』って言われたくらいなのに。

そんな彼に、一度も気持ちを伝えたことなんてない。
彼が他の子を好きにならないなんて保証はないのに。

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