冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心


放課後。
上條君は藤宮君の腕を掴んで、早々に教室を後にした。
たぶん、チョコ渡しの女子対策なんだと思うけれど。

「どうすんの?まだ渡してないんでしょ?」
「………うん」
「呼び出してやろうか?」
「………ううん、いい」
「何で?……せっかく作ったんだから、渡さなきゃ」

教室で荷物を手にして和香と視線が絡む。
友チョコはお昼休みに配ったから、それで十分。

正直、まだ気持ちが不安定なまま。
面と向かって言える気がしない。
手渡し出来れば、たぶん気持ちは伝わると思うけれど。
今のこの状況だと、手渡しすら難しい。

「帰ろうか」
「ホントにいいの?」
「……うん」
「もうっ」

和香はいつだって私の味方だ。

「小森~、悪い、ちょっと職員室に来てくれ」
「はーい。和香ごめんっ、先に帰ってて」
「えぇ、待ってるよ?」
「いいよー、遅くなるかもしれないし」
「……ん、分かった」
「あとでメールする」
「うん」

教室で和香と分かれて、職員室へと向かった。



担任の呼び出しは、学級費の残金でお楽しみ会を開くための段取りのような打ち合わせだった。

今年度は天候のせいで、遠足行事が中止になったりして、意外と学級費が余ってるらしい。
それもあって、返却するのか、お楽しみ会として何かに使うのがいいかという話で。

クラスメイトの雰囲気からして、後者を取るだろうと予想出来るから、その案として幾つか紙に書き出しそれを纏めた。
週明けのLHRで配り、意見を集うことになった。

いつもより小一時間ほど遅くに自宅の最寄り駅に到着した、その時。

「上條君」

改札横の壁に彼が凭れていた。

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