冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
目的地の多摩動物公園に到着したのは10時少し前。
既に開園していて、親子連れが結構目立つ。
「どこから観ようか」
「バスで1番奥まで行って、奥から順に正門に戻って来るといいって。そしたら、お土産も買いやすいってお母さんが言ってた」
「へぇ~」
「以前、ここでロケしたらしくて」
「なるほど~、じゃあ、まずはバス乗り場?」
「うんっ」
母親に初デートの話をしたら、色々相談に乗ってくれた。
父親と今も時間をみつけてはラブラブデートをするくらいだから。
デートの相談を母親にするってどうなの?とか思うけれど、うちの両親は本当に友達みたいな感覚だから、違和感もない。
園の最奥までシャトルバスで移動して、人気のコアラとオラウータンを見て回る。
「コアラ、可愛いっ。見てみて、仲良く寄り添って寝てるよ~。恋人同士かなぁ」
「……そうだろ、たぶん」
ガラス越しに寝ているコアラを眺め、隣りに視線を向けると、バチっと視線が絡まった。
上條君、コアラじゃなくて、私を見てたの?!
そんな些細なことでもドキドキとしてしまう。
その後はゆっくりペースで歩き、ユキヒョウ、アジアゾウ、カンガルー、チンパンジー等、端から全制覇する勢いで見て回り、12時少し廻ってサバンナキッチンというレストランに到着した。
「何食べる?」
「う~ん、カルボナーラにしよっかな」
「飲み物は?」
「ホットのカフェオレで」
「カルボナーラとカフェオレね」
「じゃあ、私は席取っとくね」
「おぅ」
注文を上條君にお願いして、レストラン内の日の当たる窓際の席を確保した。