冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

ぬいぐるみのキーホルダーを2つ手にしてる私の腕を彼がぎゅっと掴んで離さない。

「今日、上條君、お誕生日でしょ?」
「ッ?!……知ってたの?」
「ん、朝陽君に教わって」
「っ……」

やっぱり今言うべきじゃなかったのかな。
パッと視線が逸らされてしまった。

「ごめんね」
「何で謝んの?」
「なんか、嫌な気分にさせて」
「なってねーよ、っつーか、朝からめっちゃ幸せすぎんだけどっ」

口元を手で覆い隠した彼の耳が赤くなった気がした。

「なんか、催促してんみたいで嫌じゃん」
「え、何で?お誕生日なんだから、いっぱい我が儘いって甘えてくれたら嬉しいよ?」
「っ……」

あっ、気のせいじゃなかったらしい。
更に耳が赤くなった。
というより、顔まで赤くなってる。

「上條君、可愛いね」
「っ……、くっそぉぉぉ~っっっ」

照れる彼がこんなにも可愛いと思えるだなんて。
今日は初めて尽くしで凄く幸せだよ。

「では、買って来るからちょっと待っててね」
「っっっ~~っ」

絶賛照れてる彼を売り場に残し、レジへと。



夕方の混雑する時間帯を避けるために、早々に帰路に着く。

「どこかに寄ってく?」
「お家で祝ったりしないの?」
「家?……しないけど」
「しないの?!」
「小森んちはしそうだな」
「……ん、小森家はします、毎年」
「めっちゃ楽しそうだな」

電車に揺られながら、繋がれてる左手に心臓があるんじゃないかと思うくらいドキドキする。

いつ渡そう。
帰り際?
なんだか、プレゼントを渡すタイミングを逃した気がする。

「ん?どした?」

じーっと見つめていて、ハッと我に返った。

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