冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

「俺んち、来る?」
「はひ?」
「プッ……」
「今のはナシで」
「いや、可愛いからアリで」
「っっっ」

もうっ、今日何度目か分からない揶揄いにドギマギしてしまう。
だって、スッと顔を覗き込まれたら、ドキッと動揺しちゃうんだもん。

「で?……どうする?俺んち、来る?」
「……いいの?」
「もちろん!」
「おうちの人は?この時間じゃ、まだ仕事だよね」
「あ、言ってなかったっけ?」
「へ?」
「両親、今海外にいる」
「………え?」
「兄貴も」
「………」
「今、1人暮らし状態なんだけど」
「えぇ~っんッ」

ビックリして大声出してしまった口を手のひらで塞がれた。

「ごめんっ、朝陽から聞いて知ってるかと思ってたんだけど」
「んーんーんー」
「そっか、驚かせてごめんな」

ブンブンと顔を振る私の口を覆った大きな手がゆっくりと離れ、その手がふわっと頭に乗せられた。
周りの高校生らしき制服の女の子たちが、みんな上條君を見てる。
やっぱり、目を惹くほどカッコいいよね。

「そんなに見られると照れんだけどっ」
「あ、ごめんねっ」

ついついガン見してたらしい。
だって、みんなが見惚れるほどのイケメンな彼が、彼氏なんだと思ったら嬉しくて。

繋がれてる手にぎゅっと力が込められた。
そんな行動一つ一つが嬉しくて、幸せだよ。



「うち、ここなんだけど。駅からの道、覚えた?」
「……ん、たぶん」

虎ノ門ヒルズ駅から歩いて数分。
超高層マンションの上層階。
俗に言う、タワーマンションだけど、億ションというやつだろう。

下町育ちの私とは、住む世界が違うらしい。

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