冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

海外の提携校から留学しに来たバークレー兄妹を歓迎する会は生徒会主催で、全校生徒による〇×クイズから始まり、大盛り上がり。
留学生の2人も凄く楽しそうにしている。

「小森さん、そろそろ…」
「あ、はい」

生徒会副会長の芹沢(せりざわ) 篤人(あつと)(3年)に耳打ちされ、ステージ脇からステージ裏へと向かう。

失敗しても悔いの残らないように頑張ろう!
自分自身に言い聞かせて、深呼吸した。

「続きまして、本校の教職員の紹介も兼ねて、動画をご用意致しました」

体育館内の照明が落とされる。
ステージ裏にいる生徒会役員の人の合図を受け、いざ、表舞台へ。

ステージの端に置かれたグランドピアノ。
映像の邪魔にならないようにフットライトが置かれている。

ゆっくりと椅子に腰かけ、気持ちを落ち着かせていた、その時。

「少し、詰めろ」
「っ?!……え?」

突然現れたのは、前の席の上條君。
ピアノの椅子に座る私の右側に、少しずれるようにと肩をぶつけて来た。

「何でいるの?」
「……その手じゃ弾けないだろ」
「え?」
「お前が練習してた曲、俺がフォローしてやるよ。お前、左手だけでいいから」

肩が触れ合うほど近くで、生徒に聞かれないように小声で話す上條君。
まどかは何が起きているのか、さっぱり理解出来ず、勢いよく振り返ると。
ステージ裏に生徒会長が立っていて、Goodサインのように親指を立てている。

「何の曲か知ってるの?」
「あぁ、じゃなきゃ、ここにいねぇだろ」
「っ……」

上條君は何事もなかったように指のストレッチを軽くし、鍵盤にふわりと指を乗せた。

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