冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

4月中旬、2年2組の教室、4限目が始まる前の休み時間。
出席番号は名前順で、上條の後ろが小森。

2年に進級して1週間が過ぎたが、上條君とは未だにまともに会話したことが無い。

「上條く～ん、今日のお昼ご飯、一緒に食べませんか～？」
「……」
「ねぇ、いつも藤宮君と一緒にどこかに消えちゃうけど、どこで食べてるの〜？」
「……」

クラスメイトの女子2人組が話しかけてるのに、完全無視。

「ねぇ、何読んでるの～？」
「……」
「ねぇってばっ」
「うっせぇなッ！ギャアギャア騒ぐな、気が散るんだよっ！これ以上話し掛けたら、窓から放り投げんぞ」
「ぃゃぁ～んッ！触って触ってぇ～抱っこしてぇ～」
「あっ…視線が合っちゃったッ、妊娠しちゃうぅぅ」
「チッ」

自殺行為とも思えるほど毒にあてられてるのに、それをも凌駕するほどのイケメンなのだろうか？
上條君の言葉を全く気にする様子もなく、キャッキャッと浮かれる女子2人を上條君越しに眺めていると。

「朝陽っ、付き合え」
「え、どこ行くの～？」
「いいから、付き合え」

女子に囲まれ、楽しそうに会話していた藤宮君を呼びつけ、教室を出て行ってしまった。
残念そうに自席に戻る女子。
上條君を追うように教室を後にした藤宮君。
そんな彼らをまどかはじーっと観察していた。

上條君の机の上に残された1冊の本。
『TED Talks』と書かれた洋書。
高校生が読むような書籍でないのは明らか。

和香が言うように、自分より（学年2位）頭がいいのかもしれないと、この時初めて思った。