冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心


「ありがとうございました~」

冷房がガンガンに効いている食器専門店から出て来たまどか。
気温35度を超える夏の暑さに、店舗内の室温との気温差で一瞬くらっとした。

数日後に両親の結婚記念日があり、プレゼントを買うために暑い中、ショップをはしごしている。

夫婦茶碗的なお揃いの何かをプレゼントしたいまどかは、毎年夏休みに入ると、何日もかけてプレゼント選びをするのだ。
時間がある時は和香もプレゼント選びに付き合ってくれるが、ここ数年は推し活に忙しく、写メで意見を求めるくらい。

「たまには、渋谷にでも行こうかな」

新宿でショップ巡りをしていたまどかは、JR山手線で渋谷へと向かった。

真夏の太陽が照り付ける中、渋谷に降り立ったまどか。

新宿も沢山の人がいたが、渋谷も結構な人がいる。
暑いだけでも怠くなるのに、人酔いしそうだ。

一先ず喉を潤そうと、カフェでアイスティーをテイクアウトし、それを飲みながらふらふらと歩き始めた。

「ねぇ、キミ1人?」
「っ……」
「すっごく可愛いけど、1人で買い物?」
「……」
「俺らが一緒に廻ってあげようか?」

突然、どこから湧いて来たのか分からないが、大学生っぽい男性2人組が声を掛けて来た。

「結構です」
「えぇ~、なんで~?」
「1人で廻りたいので!」
「そんなこと言わないでさ、少しくらいいいでしょ」
「っ……」

行く手を阻むように1人の男が前に立ちはだかり、もう1人の男がアイスティーを持っている腕を掴んだ。

「ちょっ……、零れるから離して貰えますか?」
「怒った顔も可愛いね、俺が飲ましてあげるよ?」

手にしていたアイスティーが奪い取られた。

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