冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

「あ……」
「ん?……どうした?」

ぶらぶらと3人で買い物をしていたら、虎太郎の足が止まった。

「女の子が男に絡まれてる」
「え、どこ……?」

動体視力のいい虎太郎の視線の先に、男2人組に絡まれる女子を発見。

「え?」
「あっ……」
「廉」
「朝陽と虎太、悪い、加勢して」
「へ?」
「OK♪虎太、廉の天使ちゃんだよ、あの子」
「えっ、マジ?!」
「行くぞ」
「おぅ」

朝陽と虎太郎を両脇に抱え、廉は男2人組の元へ。

「薄汚ねぇ手で触んな」

廉はまどかの腕を掴む男の耳元に呟いた。

「ッ!?……誰、お前」
「その子の彼氏♪」

物凄い勢いで振り返った男に、朝陽が廉を指差す。

「は?」
「上條君っ」
「え、マジなの?」
「お兄さん、手離した方がいいですよ?こいつらキレたら、マジで手に負えないんで」
「っ……」

廉の隣りにいる虎太郎は、挑発するように指をポキポキと鳴らす。
その図体は3人の中では異質なもので、白いTシャツを着ててもはっきりと分かるくらい肩や腕、胸の筋肉が盛り上がっている。

「離せって言ってんのが聞こえねぇのか?」

廉の眼が鋭利な目つきに変わり、眉間に深いしわが刻まれている。

「ごめんごめん、うちら急用を思い出したから」

パッと手が離された。
すかさずその腕を廉が掴む。

男2人組が尻尾を巻いて逃げて行く。

「怪我は?」
「……大丈夫」
「1人?長瀬は?」
「和香は用があっていないの」
「そっか」

強張っていたまどかの表情が、廉に腕を掴まれ、漸く柔らかなものへと変わった。

< 37 / 132 >

この作品をシェア

pagetop