冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
登校日だから半日で終わり、クラスメイトの子達が次々と帰ってゆく。
「廉、帰ろう」
「あ、わりぃ、ちょっと待ってて」
「ん?」
廉は後ろの席にいる小森に視線を送る。
「えっと、ここじゃなんだから……渡り廊下横の階段の所でもいい?」
「ん」
「え、何なに?」
朝陽が廉とまどかを興味津々な目で見る。
「まどか~、もう済んだの?」
「ううん、まだ」
和香に事前に相談してあるまどかは、和香に助けを求めた。
「藤宮君、上條君、ちょっとついて来て?」
「……何なに~?」
楽しそうな表情の朝陽。
雰囲気から読み取って、廉とまどかに何かあるのだと理解し、和香の言葉に乗ることにした。
他の生徒が下校する為に東棟の階段を下りて行く中、まどか達は特別教室しかない西棟へと続く渡り廊下の脇にある階段を上った踊り場に辿り着いた。
「ごめんなさいっ、こんな所に呼び出して」
「いいよいいよ、そんなこと。俺と和香ちゃんで見張ってればいいんでしょ?」
「え?あ、ううん、藤宮君も一緒に」
「へ?」
てっきり見張りを頼まれたのだと思った朝陽は、驚いて和香の顔を窺った。
すると、和香はにこっと笑い、小さく頷く。
「えぇっと、これを渡したくて」
「映画のチケット?しかも、何これ、すげぇいっぱいあるじゃん」
まどかは鞄から封筒を取り出し、数十枚ある映画の無料招待券を2人に見せる。
「Rainbow Bridgeっていう芸能事務所知ってるかな?来栖 湊とかSëIとか所属してる大手プロダクションなんだけど」
「知ってる、最大手じゃん!俺、たまに雑誌モデルしてるからその名前はよく聞くよ」
朝陽が目をまん丸にして驚く。