冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

木曜日の午前9時半。
東京駅に待ち合わせたまどかと廉。

まどかは前日に和香にコーディネートして貰った恰好で駅へと向かう。
黒地に小さなドット柄のシフォンキュロットにオフホワイトのノースリーブシャツ。
夏らしく少し透け感のある爽やか且つ上品なコーデ。
冷房対策に薄手のカーディガンを持参。

待ち合わせ時間の10分ほど前に到着すると、既に上條君がいた。

「おはよう」
「っ……おはよ」

ブラックのパンツにボーダーのTシャツ、その上に白い半袖シャツを合わせた出で立ち。
改札口へと向かう女性の視線が彼に向けられている。

制服姿もカッコいいが、私服は割増しでカッコよく見える。

「結構待った?」
「いや、さっき来たとこ」

スマホを見ていた彼は、改札口へと向かう人々の邪魔にならないようにまどかの手を掴み、人波から避けるように少しずれた。

「上條君」
「ん?」
「言い忘れたんだけど……」
「……何?」
「TOHOシネマズの支配人なの、……父親」
「へ?」
「すぐそこのTOHOシネマズ日比谷にいる」
「は?」
「会ってく?」
「あ……いや……うっ……ん~」

突然何を言い出すかと思えば、父親に会うかどうかと聞かれても……。
それって、どういう意味?と、頭を捻る廉。

「とりあえず、歩こうか」
「……ん」

まぁ、深い意味はないのだろうと踏んだ廉は、なるようになるかと肝を据えた。

夏休みの東京駅は混雑していて、改札前から出口へと歩くだけなのに、真っすぐ歩けないほどだ。

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