冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

まどかの父親の気遣いもあり、観やすい席の確保に、飲み物やフードをご馳走して貰った。

話題作を観終わって、映画館を後にした2人。
近場をふらふら歩きながら、昼食のための飲食店を探す。

「本当はね、父親からチケットを貰ったりもするんだけど、社員用のチケットだと枚数に限りがあるの」
「……ん」
「その点、伯父さんの会社は出演してるキャストも多いし、プレミアム試写会とかのチケットも簡単に用意出来るし」
「……そうなんだ」
「もし、伯父さんの事務所に好きなアーティストとかアイドルとかいるなら、遠慮なく言ってね？」
「え？」
「上條君には助けて貰ってばかりで、何も御礼できてないから」
「前にも言ったけど、別に御礼して欲しくて助けたわけじゃないから」
「……うん、それは分かってるんだけど」

廉は困惑の表情を覗かせるまどかの頭を優しく撫でる。

「そんな事より、小森のお父さんに俺、彼氏だと思われたんじゃないか？」
「え？」
「年頃の娘と2人きりで映画館とか、普通考えたらデートだろ」
「あ、……うん」
「さっきの俺、大丈夫だった？」
「へ？……大丈夫って何が？」
「あー、……何でもない」

天然なのか、全く気にしてないのか。
まどかの態度が読めない廉。

「うちの両親、若いってのもあって理解力は柔軟だし。一人っ子だけど、別に娘がデートしようが、気にならないと思う」
「……そうなの？」
「うん。だって、上條君にチケットあげたいからって母親にお願いしたくらいだから」
「は？」
「両親間の会話はほぼ筒抜けだし。だから、上條君を誘うと知ってたと思う、父親」
「……マジか」
「ごめんね、なんかおかしな家で」
「あ、いや……、羨ましいよ。仲良くて」