冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

ホームに入って来た電車に乗り込む。
朝の通勤通学のラッシュ時間だから、すし詰め状態は当たり前。
電車の揺れで手摺り棒に頭をぶつけないようにまどかの頭に手を添え、そっと耳元に呟く。

「肩はもう痛くないの?」

彼の吐息がかかって、耳元が熱い。
顔を上げられず、彼の胸元に視線を固定してこくりと頷く。

「そっか、安心した」

甘いよ、言葉も雰囲気も。
普段はクールすぎるから、そのギャップがありすぎて。

隣りの駅に到着すると、和香が乗り込んで来た。
上條君にガードされてる私を見つけ、必死に笑いを堪えてる。

「上條君って、独占欲強めなんだね」
「っ……」

和香っ!
満員電車でそういうことは口にしないで!

「みたいだな。今までこんな風にしたいと思える子いなかったから、自分でも結構新鮮」
「へぇ~。けど、まどかの彼氏候補としての返答なら50点」
「それ、良いのか悪いのか微妙だな」
「まぁ、せいぜい頑張って」

何なの~~っ?!
2人で平然と会話しないで~ッ!!
しかも、和香、さりげなく上から目線なんだけど?



体育祭前日の放課後、実行委員会中。
事前の最終チェックと打ち合わせに追われるまどかは、帰りが遅くなると思い、久々に上條にメールを送る。

『今日はだいぶ遅くなりそうなので、待ってないで先に帰って下さい』
連日のように帰りの遅いまどかを心配し、玄関で待っている上條を気遣った。
すると、すぐさま返信が来た。
『分かった』

元々淡泊な性格だからか、メールの文字もいつも短い。
それが嫌だとか寂しいなんて感情にはならないんだけど、ちょっとだけ彼が何を考えているのか分からない時がある。

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