冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

「なんか今の質問、すげぇ嬉しい」
「へ?」
「俺のこと、気になったってことだろ?」
「………あ、うん」
「今はそれだけでも十分だから」

ポンポンと優しく頭を撫でられる。
こんな風に大事にされると本当におかしな思考になっちゃいそうだよっ。

「そういう顔されると、少しは脈あるって思っていいの?」
「ふぇっ?」
「『嬉しい』って顔に見えんだけど」
「っ……」

そんな顔に出てた?!

『好き』って言われたり『誰にも渡したくない』だなんて言われたら、恋愛に興味がない私でも嬉しくなるよ。



体育祭当日、雲一つない秋晴れの朝。
秋の陽に照らされた影が長く揺らめき、長い1日がスタートした。

マイク関連の配線準備があるため、いつもより1時間早くに自宅を出た。

「おはよう」
「はよ」

当然のように『明日は何時?』と昨日聞かれ、『7時に家を出る予定』と伝えてある。
いつもより1時間も早いのに、上條君は改札口にいた。

「今日の髪、可愛いね」
「っ……、お母さんが編み込んでくれたの」
「へぇ~」

これは、天然?
それとも、たらしなの?
さらっと嬉しくなるようなことを口にするんだから。

ホームで電車が来るのを待っていると、上條君からの視線を感じた。

「クラスメイトとしてじゃなくて、小森個人として……今日一日俺の応援して」
「………」
「ダメ?」
「へ?………あ、ううん、応援するよ、もちろん」

ほんの少し赤らめた顔で呟かれた。
いつだって余裕そうな顔をしてる彼が、威嚇する以外にこんな表情を見せるだなんて。
私の返答が嬉しかったのか、照れた顔を隠すために視線が逸らされた。

「ずっと本部席?」
「ううん、担当以外はクラスの所にいる予定だけど」
「そっか」

ちょっとでも近くにいたいのかな?だなんて、勝手に思考が暴走してしまう。
最近私の脳みそ、夏バテかもしれない。

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