冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
「位置に着いて、……よーい、……パンッ!」
スターターの音と共に飛び出した廉。
中間地点にあるお題を拾い上げ、走りながらそれを確認する。
流れる景色の中、必死に目的の人物を探す。
いたっ!
バチっと視線が絡まり、本部席のすぐ近くを歩いていた小森の元へ猛ダッシュ。
「一緒に来いっ!」
驚く彼女の右手を掴み、周りから『キャァ~』という声が向けられる中、無理やりゴールへと走り出した。
「1着2組の上條君!これまた小森さんです!今日は大人気ですね~♪さて、お題は……『一言、言いたい人』です!」
実行委員長が手にしているマイクが廉に向けられる。
全校生徒の視線が向けられる中、廉は息を切らしながら隣りにいるまどかを見下ろす。
「俺以外の奴についてくな」
「っ……」
「ぅぉおおおおお~っ!これはマジで、男でも萌えるセリフだぁ~っ!」
あちこちから悲鳴に似た声がわき起こる。
まどかは一瞬にして茹だこになってしまった。
両手で顔を覆い隠すが、時すでに遅し。
「2位1組の後藤君…―…」
実況アナウンスが切り替わり、盛大な溜息を零したまどか。
そんなまどかの耳元に優しい声音で呟く。
「無理やり走らせてごめんな」
「っ……気を遣うとこ、そこ?」
「あ?」
「いや、……もういい」
着順札を貰った上條と肩を並べてクラスのブースへと戻る。
終始痛いほどの視線を浴びながら……。
「上條っ、最高~っ!!」
「やっぱ、すげぇなっ」
「カッコよかったよ~っ」
「小森さん、良かったねぇ。これで全校生徒公認だよ~」
「っ……」