冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
和香の眉間に深いしわが刻まれた。
「相手以外の許可なんて要らないし、まどかだから上條に釣り合うって本気で思ってんだけど、私」
「え?」
「あの悪魔みたいな男が、まどかの前だと借りて来た猫状態なんだよ?」
「……」
「あんな風に感情曝け出して、真っ向からぶつかって来てくれる16歳、そうそういないよ?」
「……」
「天然なのか、たらしなのか、策士なのか分かんないけど、たぶん天然に程近い相当な馬鹿だと思うから」
上條君ばりの毒舌ですよ、和香さん。
馬鹿とは無縁の人に対して……。
「とりあえず、今は勉強に集中して、その後でも遅くないか」
強張った和香の表情が柔らかくなった。
「色々心配してくれてありがと」
「当然でしょ。私の大事なまどかの初恋なんだから」
「っ……」
初恋。
そう考えるとそうなのかな?
今までそういった類のことを考えることすらなかったのに。
「お小遣い上げて貰いたいから、私も頑張ろうっと」
「分からないとこあったら教えるよ?」
「わーい、いつもありがと♪」
都内有数の進学校だから、ランク下げた高校にしておけば楽に1番になれたのかもしれない。
けれど、それじゃ自分自身が納得できないと思って。
1ミリでも高みを目指して、常に新しい自分と見つめ合いたくて鼓舞して来た。
今目の前に立ちはだかってる壁は、想像以上に高すぎるけれど。
だからと言って、諦めようとは思わない。
宣言した通り、1教科でもいいから上條君に勝ちたい。
じゃないと、踏ん切りがつかないというか、自信が持てそうにないから。