冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

電車は和香と一緒に1号車に乗り込んだ。
近くにいたら、無駄な労力使いそうで。

「さっきは結構いい雰囲気だったけど、何話してたの?」
「……これ貰った」
「お守り?」
「全力出し切れる用のお守りらしい」
「ハハッ、上條らしい」
「それと、1教科でも上條君に勝てたら、お願いごと1つ叶えてくれるって」
「何それ」
「よく分かんないけど、貰えるものは貰っとこうかと思って」
「っっっ~っ、まどか最高っ!デレる上條の顔が思い浮かぶなぁ~」
「デレる?」
「そそ」

楽しそうに笑う和香。

「今日もうち来る?」
「あ、今日はパス」
「ん?」
「17時からラジオのゲスト出演があるから」
「あ~そっかぁ」

試験前日でも推し活全振りの和香。
そこは一切ブレがないのがさすが。

「けど、分かんないとこあったら夜連絡する」
「は~い」

都内有数の進学校だから、和香だって結構学力はある方だ。
私と違って、推し活に使うお小遣いのために勉強を頑張ってるらしいけれど。
そんな和香が羨ましく思える。
がむしゃらに勉強に打ち込む私と違って、ちゃんと生き甲斐を見つけてる彼女が。



「まどか、そろそろ寝ないと、試験中に居眠りしたら元も子もないわよ」
「分かってる」

深夜1時を過ぎて、就寝のため2階に上がって来た母親に注意された。
あと少し。
キリのいいところまで……。

明日、得意な古文と化学がある。
どちらか1つに絞れなくて、結局悪あがきをしてる。

だって、全教科1位なわけじゃないと思うから。
1教科でいい。
1歩踏み出せる勇気が欲しい。

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