冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
*
「今からテスト返すぞ~」
何とか集中して全教科全力を出し切ったけれど。
正直不安で押し潰されそう。
試験を受けてる時よりも、今の方が何倍も緊張してる。
気持ち悪い。
口から心臓が出て来そう。
何でこんなにも緊張してるのか、分からないけれど。
ほんの少しでいいから『神様、私にも不安を一蹴できる勇気を下さい』。
「―――小森~」
古文の大久保先生に名前が呼ばれ、解答用紙を受け取りに行く。
「よく頑張ったな」
「っ……」
手渡された解答用紙には『100点』の文字が記されていた。
嬉しくて思わず涙腺が緩む。
上條君が何点だったとしてもどうでもいいくらい嬉しい。
だって、この古文の大久保先生の試験は、『満点は不可能』と言われるくらい難癖の先生だからだ。
全員の解答が返却され、大久保先生が出席簿で教卓を叩いた。
ざわつく教室が一瞬で静まり返る。
「今回の最高得点は100点、小森1人だ。みんな小森に拍手~」
うそっ。
100点って私だけだったの?!
思わず上條君を見てしまった。
すると、笑顔でGoodサインを向けてくれた。
少し前に席替えをして、彼との席が離れたことがよかったと、初めて思った。
前の席なら、振り返って貰わないと視線が合わせられなかったから。
斜め前の席の和香が振り返って、『お願いごと考えないとね♪』と小声で呟いて来た。
そういえば、そういうオプションもあったっけ。
そんなオプションどうでもいいくらい、今は幸せを噛みしめてる。