冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心



「今からテスト返すぞ~」

何とか集中して全教科全力を出し切ったけれど。
正直不安で押し潰されそう。

試験を受けてる時よりも、今の方が何倍も緊張してる。

気持ち悪い。
口から心臓が出て来そう。

何でこんなにも緊張してるのか、分からないけれど。
ほんの少しでいいから『神様、私にも不安を一蹴できる勇気を下さい』。

「―――小森~」

古文の大久保先生に名前が呼ばれ、解答用紙を受け取りに行く。

「よく頑張ったな」
「っ……」

手渡された解答用紙には『100点』の文字が記されていた。

嬉しくて思わず涙腺が緩む。
上條君が何点だったとしてもどうでもいいくらい嬉しい。
だって、この古文の大久保先生の試験は、『満点は不可能』と言われるくらい難癖の先生だからだ。

全員の解答が返却され、大久保先生が出席簿で教卓を叩いた。
ざわつく教室が一瞬で静まり返る。

「今回の最高得点は100点、小森1人だ。みんな小森に拍手~」

うそっ。
100点って私だけだったの?!

思わず上條君を見てしまった。
すると、笑顔でGoodサインを向けてくれた。

少し前に席替えをして、彼との席が離れたことがよかったと、初めて思った。
前の席なら、振り返って貰わないと視線が合わせられなかったから。

斜め前の席の和香が振り返って、『お願いごと考えないとね♪』と小声で呟いて来た。
そういえば、そういうオプションもあったっけ。
そんなオプションどうでもいいくらい、今は幸せを噛みしめてる。

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