冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
カフェ前で和香と別れ、3人で駅へと向かう。
「あっ、ごめん。俺、ちょっと用思い出した」
「……」
「……」
完全に気を遣われた。
藤宮君が颯爽とどこかへ消えてしまった。
どうしよう。
間がもたない。
「小森んちって、隣りの駅だよな?」
「……うん」
「じゃあ、送ってく」
「え?」
「歩いてもそんな距離ないだろ」
「……うん」
「……そんな嫌な顔されると、凹むんだけど」
「あっ、えっと、……嫌なんじゃなくて、何て返したらいいのか分からなくて」
「試験も終わったし、少しくらいいいだろ」
「っ……ん」
距離にしたら1キロもない。
だけど、久しぶりすぎて…。
和香と藤宮君がいないと、間がもたない。
「お願いごと、何にするか決まったか?」
「あ、……ううん、まだ」
「そっか。……ゆっくり考えろ」
「……うん」
和香たちがいる時は終始無表情な感じだったのに、今隣りを歩く上條君は柔らかい笑みを浮かべてる。
「上條君って、古文以外、全部1位だった?」
「それ聞いて、小森にメリットあんのか?」
「へ?」
デジャヴ?
前にも同じように言い返されたことあったな。
「メリットがあるのかどうかは分からないけど、ただ単にどうだったんだろ?って思って」
「………」
「別に言いたくな「ん」
「……ッ?!」
やっぱりそうなんだっ。
そりゃあ、敵うわけないよね。
そんな人相手に、1教科でも勝てたことが誇らしく思える。
「完敗ですっ」
「……ごめん」
「いや、謝んないでっ」
「ごめ……なんて返していいのか、マジで困るんだけど」
「フフッ、もういいから」
こんな完璧な人に好かれてるだなんて、これこそ奇跡なんじゃないかと思えてならない。
後頭部を掻く彼を見上げて、クスっと笑みが零れた。