冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
初めまして

11月に入り、朝晩の冷え込みがだいぶ厳しくなって来た、とある土曜日の18時過ぎ。

「やっぱ、止めにしないか?」
「はぁ?ここまで来といて、止めるは無いだろ」
「……」
「廉が初めて熱くなれるものに出会えたんだから、俺だって何かしてやりたいしさ」
「……」
「ってか、手っ取り早く長瀬に聞くか?」
「いや、それはさすがに……」
「何だよ、今さら」
「……なんか、ストーカーじゃね?」
「あ、今頃気付いたんだ?」
「え」
「……マジか」

先週、2学期の中間試験の試験結果が配布され、久しぶりに小森と過ごせた。
まぁ、朝陽と長瀬の協力あってのことなんだけど。

その帰り道に朝陽が気を利かせて2人きりにしてくれて。
自宅まで送り届けようと思っていたら、駅の反対側だからと、駅前で分かれた。

だから実際、小森の自宅がどこにあるのかは分からない。
人形町駅の南側に位置しているということだけで。

「廉がここまで突き動かされてるのには正直驚いてるけど、今までが冷えきってた分、これが至極当たり前に思えるんだよな」
「……」
「こんな風に廉を変えてくれたまどかちゃんには感謝だよ」

体育祭当日の朝に自宅から駅に到着した時間を計算すると、駅から徒歩5分くらいの距離。
先週『自宅まで送り届けられなかった』と朝陽に伝えたら、『次からはちゃんと玄関前まで送り届けろ』とダメだしされた。

そんな流れで、彼女の自宅周辺がどんな街なのか知りたくなって。
普段送迎以外で降りたことの無かった駅。
駅周辺どころか、街の様子も殆ど知らなくて。
思い立ったら即行動だと、朝陽の買い物に付き合った足でそのまま人形町へと来てしまった。

そして今……駅周辺をやみくもに歩いている。

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