冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心
「ん?」
「……え?」
まどかと和香の視線の先に、人目を惹く容姿の男女が歩いている。
それも、凄く親しそうに。
女性は20代前半くらいで、色香を纏う雰囲気の美人系だ。
ショート丈のコートにミニスカートとヒールのあるロングブーツを合わせたコーデで、遠目でも歩く姿が綺麗だと思えるほどだ。
その隣りに立つのは……。
「あれって、上條じゃない?」
「……ん、たぶん」
女性の隣りを歩く男性は紛れもなく、上條君だ。
「彼女?」
「………」
「お姉さん?」
「お兄さんが1人いるだけだったはず」
「……じゃあ、従姉?」
「………」
「浮気??」
「……別に私とは付き合ってないから、浮気じゃないでしょ」
「じゃあ、何?あの人が本命ってこと?」
「……分からないけど」
学校での彼はいつだって無表情の冷淡王子で、時に悪魔とも思えるほどの猛毒王子。
そんな彼が、私と2人の時は優しい顔を覗かせたりしてたけど……。
「まどか以外の人にも、あんな顔するんだね」
「………」
今自分の目に映る彼は、私に見せたような優しい笑みを浮かべ、時折弾けた笑いも覗かせている。
ズキッと何かが胸の奥に突き刺さる。
鋭くて冷たくて痛みを帯びる感じに。
「まどか?……大丈夫?」
「……ん」
何だろう。
初めて味わう感覚というか、初めて経験する感情にどうしていいのか分からない。
「あっ、お店に入るんじゃないっ?!」
世界的にも有名な宝石店に、女性に腕を引かれ、上條君は姿を消した。
「……入ったね」
「ぇぇぇええええ~~ッ!!アウトだよっ!クリスマス前にあーいう店に入るとか~、ありえないっ!」
「……別に誰にも咎める権利はないから」