冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

「そうかもだけど、……どうする?うちらも入る?」
「は?……いや、いいよっ。なんかそれって、虚しくない?」
「……そうだけど」

別に私と上條君との間には何の関係もない。
強いて言うなら『クラスメイト』という枠組だけ。

彼が誰とデートしようが、関係ない。
むしろ、クリスマスというイベントで盛り上がる雰囲気の中、あんなイケメンがおひとり様で過ごす方が違和感がある。

「なんか、ちょっと疲れた。どこかのカフェに入らない?奢るから…」
「うん、……そうしよう」

胸の奥がギスギスする。
ショックを受けるほど親しい間柄でもなかったはずなのに。
何だろう。
ちょっと、呼吸がし辛いくらい体が重い。

和香をカフェに誘い、クリスマス限定のケーキセットで気分をリセットする。
窓際の席から外を眺め、待ちゆく人を眺めていた、その時。

「っ……」
「あっ……」

和香にも見えるらしい。
有名な宝石店の小さな紙手提げを手にして燥ぐ女性と、その女性を柔和な表情で見つめる上條君の姿が。
とても幸せそうな雰囲気の2人が、カフェの前を通り過ぎて行った。



翌日の月曜日。
冬休みに入るまであと1週間。
期末考査も終え、のんびりと過ごしたい所だが、都内有数の進学校に通うまどか達は卒業後の進路に向け、本格的に勉強に本腰を入れなければならない。

和香は得意の英語を活かして、通訳士になりたいらしい。
外国語大学を志望していて、留学も視野に入れているらしい。
ゆくゆくは、まどかの伯父が経営する芸能プロダクションと専属契約を結ぶのが夢らしい。

まどかは弁護士になるのが夢だったが、最近は海外を飛び回る客室乗務員にも憧れを持つようになった。
和香が毎年年末年始にグアムに行っている話を聞くうちに、異国の文化と空の旅に魅了されたからだ。

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