冷淡男子の上條君は全振り初カノにご執心

朝のSHRで、担任の岡部先生が休み明けに進路希望調査を取ると言い伝えた。
来年はいよいよ受験生だ。
その直前の僅かな時間。

1年後には進路が決まっている人も出て来る。
まだ先のことだと思っていたのに、あっという間に高校生の終わりが見え始めて来た。



5時間目の世界史の授業中。
チラッと南側の窓際の席に視線を移すと、左手で頬杖をついて、右手でペン回しをしている上條君を捉えた。
昨日街中で見た彼とはだいぶ印象が違う。
別人じゃないかと思うくらい、学校での彼は無表情で、顔色一つ変えずに淡々と過ごしている。

近くの席の女子が話しかけても完全スルー。
しつこく話しかけようものなら、『ギャンギャン吠えんな、うぜぇから、失せろ』と吐き捨てる有り様。
一体どんなスイッチが入ったら、あの冷淡マスクがにこやかな笑顔に変わるんだろうか?

昨日のあの女の人。
一体誰だったんだろう?

「小森、……小森っ」
「あ、はいっ!」

ぼーっと考え事をしていて、先生に呼ばれてるのに気が付かなかった。

「次の所から読んで」
「っ……」

どこをやってたのかすっかり分からなくなっていた。
すかさず斜め前の和香に視線を送り、読む箇所を教わった。

ちゃんと集中しないと、1番目指すどころか、2番から下降しそうだ。



放課後。
帰り支度をして、和香と一緒に玄関へと。
すると、玄関横の自動販売機の所に藤宮君と上條君がいた。

「和香ちゃん、まどかちゃん、一緒に帰らない?」
「…まどか、どうする?」
「………」
「最近、一緒に帰ってなかったし、いいでしょ、たまには」

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